憲法9条を考える
少なくとも5年以上前に、投稿した随筆です。新聞広告にも出しました。今読んでも、間違ったことは書いていないと思うので、憲法記念日も近づいてきたので、投稿します。
ちなみに、仙石元代議士は、現実とずれている憲法は改正するべきだと言っていました。
今はどのように考えているか、わかりませんが。
憲法論議をテレビ中継などで見ていると、憲法の前文「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」これを本当の意味で信用しているのは、憲法改正論者で、本当の意味で信用していないのは、憲法擁護論者だという気がする。
国民が選んだ代表者が信頼できるかどうか、例えばドイツのヒットラーは選挙で選ばれたし、イラクのフセインだって選挙で選ばれている。イギリスのブレア首相は国民の大多数が反対するイラク派遣を強行したけれども、やはり選挙で選ばれた。
それでは、なぜ信用していない憲法を守ろうとし、信用しつつ変えようとするのだろうか。それは、現実認識に違いがあるからだと思う。わが徳島のホープ仙石衆議院議員の理論は整然としているが、国民が選んだ政府が信用できるかどうかという点については、戦前が異常で現代が正常だとする歴史認識の違いとしか言いようがない。
どちらが異常かという問いに関しては、どちらも正常だったと私は認識している。それ故に、どちらに転ぶかは、紙一重、紙一重の違いで戦争をしたり、しなかったり、抑圧された政権ができたり、できなかったりするのである。
現代のような情報化社会においては、戦前のような思想統制は不可能だと多くの人は考えている。しかし、ファッションにしろ、健康食品にしろ、一定の方向に流れるし、何より、2001年9月11日以降の米国の状況を見れば、物言えぬ社会が再び来ないという保障はどこにもない。米国はこのままファシズムに向かうのか、よみがえるのかという問いに関しては、よみがえってほしいという望みも含めて、よみがえると答える人は多い。しかし、日本が今の米国のようになったとき、よみがえることは不可能に近い。
憲法改正論者の常とう理論は、自衛隊は憲法違反をしている。多くの国民は自衛隊を認めている。それ故、どちらかを変えなければ、現実に合わない。憲法9条の方を現実に合わせて変えるべきだと主張する。自衛隊を憲法で認めても、日本は平和を主張できると言う。
しかし、理想を失った政治はどこへ行くのだろう。武力と金にまみれた現実の政治を容認するのだろうか。かつて日本は現実に合わそうと努力に努力を重ねた結果、太平洋戦争という泥沼に入ったのではなかったのか。
米国は自由という理想を掲げている。フランスは自由、平等、博愛を掲げてフランス革命を戦った。
米国やフランスの現実が、いかに理想に遠いものかは、もはや常識ではないだろうか。現実はどうあれ、唯一の被爆国として日本は平和を掲げて、将来心ある政治家が出てきた場合、その夢を実現するべく、未来に希望を託しても良いではないかと思う。
また、日本の外交を、弱腰外交、謝罪外交と揶揄する声も聞かれる。「ノー」と言える日本にするためには、憲法9条の改正が必要だというのである。各国から袋叩きにあっているように見える日本に、右翼的な人たちはかなりのストレスがたまっているようだ。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」今の日本は実っているのであって、飢餓に苦しんでいるわけでない。かつて欧州のまねをしたように、米国をまねて、武器を持って各国を黙らせたいのだろうか。それは思考の停止につながる。
財界の中には、20年前のイラン・イラク戦争で各国は自国の軍隊の派遣によって早急にイランからの脱出が可能だったのに、日本だけは自衛隊の派遣もままならず、トルコの協力によって危機一髪脱出できた。それゆえ憲法を改正したいという欲求があるようだ。
しかし、自分たちの努力で、トルコの協力を得て危機一髪脱出できた国と、自国の軍隊によって安易に脱出できた国のその後を振り返ってみよう。日本はそういう努力の積み重ねによって今日の経済的繁栄が築かれたと思えないだろうか。自国の軍隊に守ってもらいながら、外国で商売をするのは、口でどのようにりっぱに市場主義を唱えたとしても、帝国主義にほかならない。日本は世界で唯一の市場経済主義国家ではないだろうか。
日本の企業の方が国家よりも、はるかに多くの情報を持っているとは、よく聞く話である。
それが今日の日本の企業を強くした秘訣ではないだろうか。これからも大きな目と耳を持って自分たちの安全を自分たちで確保しながら、世界に羽ばたく企業になってほしい。日本の企業には国家に頼らずとも自分たちの力で安全を確保できる十分な余力があるのだから。国家に安全を頼ったとき、それは日本の企業の凋落のときだと思ってよいと思う。
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2014年4月23日 | コメント/トラックバック(0) |
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